刊行書一覧>人文(鉄道・海洋)>『世界鉄道百科図鑑』>『世界鉄道百科図鑑』推薦
【推薦のことば】
「一日も早くページをめくりたい」
種村直樹氏(レイルウェイライター)
日本が鉄道100年を迎えた1972年(昭和47年)の翌年、新聞記者から、鉄道と汽車旅をテーマに著作するフリーライターへ転身、「レイルウェイ・ライター」と名乗ろうと思うと,親しくしていただいていた英文学者、故工藤良美さんに報告した。戸惑いながら、あたりさわりのない返事をする人が多い中で,工藤さんは違った。「直ちゃん、それは素晴らしい。ネーミングも、いいですね。鉄道の本場のイギリスには、そうしたプロの先輩が、何人かいますよ。」大いに力を得て,それから30余年、なんとかやってくることができた。横文字に弱いので、先輩の原書には当たれていないが、この『世界鉄道百科図鑑』も,それら先人の力作のひとつに違いない。日本の車両たちが,どのように評価されているか楽しみにしながら、一日も早くページをめくりたい。古い歴史ばかりでなく、日本の索引の項に「マグレヴ・シャトル」なる用語が見え、超電導磁気浮上リニアモーターカーにも触れているようで、嬉しい。
「日本にはなじみの薄いものがたくさん収録」
曽根悟氏(工学院大学名誉教授・海外鉄道研究会会長)
イギリスの鉄道ファンには良く知られた著者による『世界鉄道百科図鑑』が日本の鉄道ファンの大御所お二人によって翻訳出版された。日本の鉄道ファンにはなじみの薄いものがたくさん収録されており,蒸気,ディーゼル,電気と動力別に3部構成になっていて,それぞれの頭には筆者なりの見方での発達史が記されており,編成列車も含めて載せている。動力にはガソリン機関やガスタービンも含まれているし,エレクトロディーゼルとか,蒸気ディーゼル機関車などの珍品もあれば,JR北海道のDMVの祖先のような車両もあり,珍車集としてだけでも価値が高い。世界一の電車王国とも言うべき日本の電車は,SE車もビスタカーもパノラマカーもなく,かつては気動車保有数で世界一になったこともある日本の気動車もほとんど無視など,ヨーロッパ系のメーカー主体,機関車主体の世界の鉄道図鑑ともいえる。技術的データも載ってはいるが,蒸気機関車の重量に炭水車を含んでいたりいなかったりとか,調べればすぐ判るはずのデータを入手不能と片づけたりしているのは残念である。