はじめに
1 芥川「庭」と「洗馬」のトポス
2 明治期の修身言説とイソップ寓話
3 芥川と「イソップ寓話」
第一部 所々丹塗の剥げた 大きな圓柱に蟋蟀が一匹とまつてゐる
第Ⅰ章 柳川隆之介「羅生門」と明治期の「蟋蟀」言説
1 柳川「羅生門」と芥川「羅生門」
2 芥川「羅生門」と『今昔物語集』の典拠との差異
3 「蟋蟀」は、「きりぎりす」か「こほろぎ」か
4 明治・大正初期の「蟋蟀」表記
5 明治期のイソップ寓話「蟻と蟋蟀」と修身言説
6 イソップ「蟻と蝉」と日本のイソップ受容
7 芥川と修身言説
8 キーツ「きりぎりすと こおろぎ」の翻訳―薄田泣菫「蟋蟀」と田山花袋「地の歌」
第Ⅱ章 明治期の文学にあらわれる「蟋蟀」
1 福永挽歌『散文詩集習作二十七篇』の「蟋蟀」と「羅生門」
2 両義的契機をはらんだ境界領域―「渡し」と「橋」
3 「蟋蟀」と渡し―廣津柳浪「今戸心中」
4 山東京伝『吾妻餘五郎雙蝶記』と「岩見重太郎」言説
第Ⅲ章 芥川以前の「羅生門」―「渡辺綱」から「マクベス」まで
1「渡辺綱」言説
2 妖怪不在の物語―「怪力乱神」を語らず
3 明治期の「鬘」言説
4 鷗外訳『即興詩人』の「仮髪」
5「羅生門」とシェイクスピア『マクベス』
第二部 そこで洛中のさびれ方は一通りではない
第Ⅳ章 「羅生門」の胚胎と明治期の「さびれ」言説
1 芥川「羅生門」「松江印象記」の「さびれ」
2 芥川「松江印象記」の二種類の「橋」
3 「松江印象記」の「水/橋/都市」言説と荷風「海洋の旅」
4 「松江印象記」の「天主閣」
5 「不忍池」のトポスと、うしなわれゆく「江戸趣味」
第Ⅴ章 明治期の「実利主義」言説と「江戸趣味」のさびれ
1 「実利主義」言説と廃物利用
2 「新文明の実利主義」の「幼稚なる偶像破壞者」
3 「実利主義」の例――「ペンキ」言説
4 「羅生門」と「大窪だより」「日和下駄」
第Ⅵ章 芥川の「さびれ」言説
1 「濠端の住まひ」体験と「羅生門」
2 「さびれ」言説―松江からの手紙
3 ハウプトマンと「さびれ」言説
4 「寂しい人々」から「死の勝利」へ
5 「上總一の宮」の「さびれ」体験
6 「さみしい」と山本喜誉司
第Ⅶ章 「羅生門」の生い立ち
1 「羅生門」の歓迎されざる生いたち
2 なぜ、無視か?―みずからの「羅生門」擁護論
3 芥川における「武者小路」と「バプテスマのヨハネ」
4 芥川とトルストイの「人道主義」
5 クロポトキンの「温き心」―無政府主義のトルストイ
6 「淤泥にまみれ」た自然主義からの脱却
7 「人生のための藝術」―芥川と「ヰリアム・モリス」言説
8 芥川と「人生観」言説と「道徳」言説
第Ⅷ章 芥川と明治期の「ニーチェ」言説
1 明治期の「ニーチェ」言説
2 高山樗牛の「美的生活」
3 芥川と「ニーチェ」・「高山樗牛」
4 「下種/俗物」言説とアーノルドの影
5 鷗外「沈黙の塔」と「羅生門」
第三部 蛇を四寸ばかりづゝに切つて干したのを干魚だと云うて
第Ⅸ章 明治期の廃仏毀釈
1 鉄砲伝来と種子島の慈遠寺
2 慈遠寺の消滅
3 明治期の神仏分離政策と廃仏毀釈
4 僧侶のリストラと廃物利用
5 「廃仏毀釈」表象としての「羅生門」
第Ⅹ章 明治期の「廃物利用」言説
1 はじめに
2 明治期の「廃物利用」言説
3 明治期の「瓜生岩」言説と修身言説
4 「生きるための勇気」と「子非語怪力乱神」
5 明治期の「面皰」言説
6 「廃物利用」の前提
7 「蛇」を「干魚」といつわって売った女の話の出所
第Ⅺ章 「政商・大倉喜八郎」言説と芥川の明治体制批判
1 「廃仏毀釈」と大倉喜八郎
2 「干魚」をいつわって「蛇」と―「大倉喜八郎」言説
3 「羅生門」と「偸盗」と
4 姦商・大倉喜八郎
5 芥川と大倉喜八郎
6 廃藩置県と「下人」
7 明治政府批判としての「羅生門」
あとがき―「表象」とはなにか?
人名索引