表象のエチオピア—光の時代に

【著】高知尾

 

定価=本体6,000+税

A5372ページ

20069月発売

ISBN 978-4-903487-04-0

在庫僅少

 

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西洋世界は、他者を通していかに自己を表象してきたか?

英国人初のエチオピア旅行者となったジェイムズ・ブルースの『旅行記』と、それをめぐる近代イギリス社会のありようを丹念にたどり、異文化理解の可能性と限界を問うた、人類学精神史への試み。

 

▶▶▶KINOKUNIYA BOOKLOG「書評空間」(2007.6.12:高山宏氏評)、英語青年(2007年2月号:原田範行氏評)に書評が掲載されました。

第Ⅰ章 エチオピアを表象するということ

 覚醒の舞台/エチオピアへの関心(日本/古代〜近代)/リプリゼント(表象)するということ

第Ⅱ章 生還した男

ブルースの帰国と、アフリカと南太平洋の関心/ブルースの人生/旅の真偽/ジェントルマン旅行者とイギリスの中枢/ブルースの自己表象

第Ⅲ章 神話、伝承、移りゆく時の記憶

幸福の谷/アイティオペスの土地/聖書に語られたアイティオピア/変わらざる古代東方/「衰退し崩壊する」世界という言説/ギボンとブルースのエチオピア教会論/ローマ帝国の専制体制/キリスト教と野蛮の勝利/アビシニアの王権と教権/アビシニアにおける「野蛮の勝利」

終章 ブルースの表象とその読者たち

イギリスの啓蒙主義/ブルースによる表象と表現/ダーウィンとルナ・ソサイエティの希望/コールリッジ、黙示録の世界へ/ヘンリー・ソールトと外交の舞台/旅する者の望郷と死

 

参考文献/あとがき

 …あれから人類は幾度「野蛮の勝利」を経験してきたことか。暴力は暴力を生み、残虐は残虐に報いて、「文明」と「野蛮」の境界を消し去ってきたことか。冷酷な暴君たちは許されざる者たちを生み、知の報復が繰り返されてきたことか。欲望は欲望を増殖し、無惨な廃墟はさらなる心の荒廃を生み出したことか。希望は絶望を生み出し、解放と抑圧のための暴力を重ねてきたことか。希望の言葉ですら欲望を鎮めるどころか、その傲慢な破壊に手を貸してきたことか。暴力の表象はいかなる人類の未来を、可能性を生み出すのだろうか。

高知尾 仁(たかちお・ひとし)

東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所准教授。文化人類学・人類学精神史専攻。著書に『球体遊戯』同文館、『表象のオリエント』アジア・アフリカ言語文化研究所、編著に『表象としての旅』東洋書林など。

 

(*刊行時のものです)